はじめに:伝統企業・資生堂がなぜDXを推進したのか?
「資生堂」といえば、140年以上の歴史を持つ日本を代表する化粧品ブランド。その長い伝統を守る一方で、世界的な競争や消費者行動の変化に対応するため、2016年頃から本格的にデジタルトランスフォーメーション(DX)に舵を切りました。
この戦略的なデジタル変革により、資生堂はグローバル市場で再び存在感を取り戻し、売上・ブランド力の両面で飛躍的な成長を遂げています。
この記事では、資生堂が実践したDXの具体的な施策や成果、企業・個人が学ぶべきポイントをわかりやすく解説します。
1. デジタル部門の設立:DXは組織づくりから始まった
✔ 2016年:Digital Center of Excellence(DCoE)を設立
資生堂はまず、「デジタルはマーケティングだけではなく、経営全体に影響を与える」として、グローバル規模で**Digital Center of Excellence(DCoE)**を設立しました。
この部門が担ったのは:
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グローバルのEC統合と分析基盤の整備
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顧客データプラットフォーム(CDP)の開発
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SNS・インフルエンサー戦略の一元化
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ブランドごとのデジタルKPIとPDCAの設計
これは単なる「IT部門」ではなく、ブランドと顧客をつなぐ中核部門として、経営と現場を巻き込むプロジェクトを推進する役割を果たしました。
2. 実施された主要なDX施策
A. ECの強化とパーソナライズ化
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自社ECとAmazon・Tmallなど外部チャネルを統合管理
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商品レコメンドや肌診断機能など、パーソナライズ化された体験設計
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EC限定ブランドやオンライン先行販売などを戦略的に展開
B. インフルエンサーマーケティングとSNS活用
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Instagram・YouTube・X(旧Twitter)を活用した、地域・世代別のターゲティング
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グローバル規模でのインフルエンサー連携管理ツールを導入
C. AI・データ活用による製品開発と接客支援
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AIによる「肌解析ツール」「バーチャルメイク機能」の導入
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実店舗・EC問わず使える「統一された顧客体験」の構築
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データから新商品ニーズを抽出し、製品開発にも反映
3. 数字で見る成果:DXが生んだインパクト
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EC売上:5年間で約5倍に成長
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中国市場を中心に、デジタル経由の売上は年平均30%以上の成長
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グローバルブランド「NARS」「Shiseido」などのDX連携で売上14%増
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マーケティングROIが2倍以上に改善(同一広告予算で売上2倍)
これらの成果により、資生堂は“伝統を守りながら革新する企業”として、グローバルからも高く評価される存在に返り咲きました。
4. 資生堂のDXから学べるポイント(企業・個人共通)
学べること | 説明 |
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1. DXは「部署」ではなく「戦略」 | 単発で終わらないように、全社的なビジョンに落とし込む必要がある |
2. 顧客体験に注目 | DXのゴールは「顧客にとっての心地よさ」。技術より“人間中心” |
3. チャネル横断の統合が重要 | 実店舗・EC・SNSなどを一体化し、ユーザー目線で整えること |
4. 小さく始めてスピード重視 | 最初から完璧を求めず、改善しながら広げる姿勢が鍵 |
5. データを「使える」形にする | データ収集だけでなく、活用→施策→改善のサイクルを確立 |
5. 個人でも真似できる!小さなDXのヒント
DXは企業だけのものではありません。たとえば:
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SNSの分析ツールを使って投稿の効果を測る
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ECやネット販売で「誰に何をどう届けるか」をデータで考える
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ノーコードツール(Notion, Canva, Shopifyなど)で業務を効率化する
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オンライン接客や自動応答(ChatGPTなど)を試してみる
こうした日々のデジタル活用の積み重ねが、個人のDX力=市場価値の高さにもつながっていきます。
まとめ:資生堂のDXは、「伝統×革新」のロールモデル
資生堂の成功は、単なる「デジタル導入」ではありません。
経営・ブランド・顧客体験をすべて再設計することで、新しい価値を創造した好例です。
企業としてDXを進めたい方も、個人でキャリアを広げたい方も、この事例からは多くのヒントが得られるはずです。
「変える勇気」と「守る覚悟」を両立させた資生堂のように、あなたのビジネスにも“デジタルの翼”を。今こそ、一歩を踏み出しましょう。
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