投稿日:2025年6月14日
■ はじめに:広告の主語が“個人”に変わった時代
かつて広告といえば、企業がテレビや新聞・雑誌といった大手メディアに出稿し、消費者に向けて情報を一方的に発信するというのが基本構造でした。
しかし、いまはどうでしょうか。
YouTube、Instagram、TikTok、Twitchなどのプラットフォームでは、企業ではなく“個人”が商品を紹介し、情報を拡散し、広告収入を得るのが当たり前の風景となっています。
この構造変化は単なる流行ではなく、「クリエイター経済」として、広告・メディア・雇用構造を根本から揺るがすほどのインパクトを持っています。
■ クリエイター経済とは何か?
クリエイター経済(Creator Economy)とは、自らのコンテンツや影響力を使って収益を得る個人の経済活動を指します。ここには次のような存在が含まれます:
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YouTuberやTikToker、Instagramerなどの動画・SNS系インフルエンサー
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Substackやnote、Voicyなどを活用する知識発信型ライター・パーソナリティ
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BOOTHやBASEでグッズ・作品を販売するアーティストやクラフト制作者
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TwitchやMildomで配信するゲーム実況系ストリーマー
特に注目すべきは、「広告主」がもはや大手企業に限られず、個人クリエイターにもなっているという点です。
■ なぜ今、個人が広告主体になっているのか?
この流れの背景には、次のような構造変化があります:
1. メディアの信頼性より“個人の共感性”が重視される時代
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若年層はテレビCMやバナー広告よりも、「○○さんのおすすめ」の方が信用できる
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情報の“熱量”や“リアルさ”が購買行動に大きく影響する
2. プラットフォームがマネタイズ環境を整備
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YouTubeパートナープログラムやTikTokクリエイター基金、Instagramのリールボーナスなど
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収益化の基準や広告の分配モデルが明確化し、参入障壁が下がった
3. ブランド側の意識変化
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マス広告では届かない“ニッチで熱心な層”に、クリエイターを通してアプローチできる
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大手企業もクリエイターとのコラボ(UGC型マーケティング)に本格投資を始めている
■ 実際、どれだけ市場は大きくなっているのか?
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2024年末時点で、クリエイターによる世界の広告収入は2,350億ドル(約37兆円)規模
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WPPの発表によれば、2025年中にクリエイター系メディアの広告収入が旧来メディア(TV・新聞・雑誌)を超える見込み
これは、インフルエンサーが広告の“配信媒体”になるという意味だけでなく、広告の発案・制作・配信・評価すべてを担うプレイヤーに変化していることを意味しています。
■ 広告モデルの変化:テレビCM vs 個人クリエイター
項目 | 従来型広告(TV・新聞など) | クリエイター広告 |
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発信者 | 企業広告部/代理店 | 個人クリエイター本人 |
媒体 | マスメディア | SNS/動画/音声など |
受け手 | 不特定多数 | 関心・共感層 |
メリット | 広範囲リーチ/即時性 | 信頼性/熱量/拡散力 |
計測方法 | 視聴率/印刷部数 | エンゲージメント/クリック/購入実績 |
企業はクリエイターに報酬を支払うことで、「広告主を内包するメディア」としての力を借りているわけです。
■ 代表的な収益手段と広告モデル
クリエイターが広告収入を得る手段は複数あります:
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アドセンス型(収益の一部を分配)
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YouTube再生数に応じた広告分配
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TikTokの動画閲覧ボーナス
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スポンサー型(企業との直接契約)
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インスタで企業の商品を紹介する“タイアップ投稿”
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ゲーム実況者がブランドと独占契約を結び、製品露出を図る
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アフィリエイト型(成果報酬)
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リンクから商品が売れた場合に報酬が発生
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note記事やX投稿での紹介も増加中
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オリジナル商品販売型
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ファン向けグッズや講座販売で直接収益化
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BOOTH、BASE、Shopifyなどでの展開が主流
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■ 今後、個人広告主はどこまで進化するのか?
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企業を超えて、自らブランドを作る個人が増える
例:美容YouTuberがコスメブランド立ち上げ/料理系TikTokerがレトルト食品をプロデュース -
AI活用で個人でも広告制作が可能に
生成AIを活用してCM動画、ナレーション、アニメーション制作まで1人で完結する例も増加 -
広告運用スキルの民主化
Meta広告やGoogle Adsが個人でも回せるUI設計となり、“広告の出稿者”としての個人が増加中
■ まとめ:これからは「すべての人が“広告の発信者”になれる時代」
クリエイター経済は、単に「フォロワー数が多い人が稼げる」時代を超えました。
今は、ニッチなテーマでも価値があり、リアルで熱量ある発信ができる人こそが広告主にもなり得る時代。
広告とは、「大きな予算で、大きな枠に載せるもの」ではなく、
「小さな声でも、信頼があれば届くもの」へと変わってきています。
あなたが好きなことを発信すること。
それ自体が、誰かの心を動かす“広告”になるかもしれません。
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